★ある日ペットショップで…

かなり以前のこと、某ペットショップでの出来事です。小動物のケージ前で、小学生の男の子二人の兄弟が、ケージをバンバン叩いたり、揺らしたりしていました。

 

子ども達の父親は、他の動物を見ているのか、気づいていない様子です。店員さんは、ちょっと眉をしかめながらも、特に注意などしていませんでした。

 

自分は、子ども達が騒ぐ分には特に気にならないのですが、小動物がいじめられているのはあまりよろしくないな、と思い、子ども達の腕をちょっときつめに握り、「動物たちがかわいそうでしょ、やめなさい」というような注意の仕方をしてしまいました。

 

さて、その後さすがに狭い店内はシーンとなってしまいました。自分としても、見ず知らずの子にいきなり注意するのはやりすぎだったかもしれない、と思いました。自分の子どもの頃は、見知らぬ大人に注意されるのは普通でしたが、昨今はそうでもなくなっているご時世です。

 

小学生のお父さんが何か文句を言ってくるかなとか、店員さんに何か注意されるかな、などと考えながら、かといってすぐにその場を立ち去るのもためらわれ、小心者の自分はドキドキしているばかりでした。

 

気まずい沈黙を破ったのは、意外なことに小学生の兄弟でした。彼らは自分に「ねぇ、これってどんな生き物なの?」とか「今、寝てるのかな」などと、いろいろな質問を興味深げにしてきました。どうやら、彼らは動物たちをいじめようとしていたのではなく、仲良くなりたかったらしく、その方法が分からずにケージを叩くという行動に出たに過ぎなかったようでした。

 

子ども達の質問に回答すると、彼らはとても素直に、そして真剣に動物たちと仲良くなろうとしていました。その様子を見て、もっと優しく注意しておくべきだったな、と後悔しました。その後、お父さんがこちらに歩み寄り、「どうも子ども達がご迷惑をおかけしました」と頭を下げてこられました。なかなかできることではない、素晴らしい対応です。「いえいえ、こちらこそ余計な口出しをしました・・・」と、なんとか答えましたが、この親子の対応に感心しました。(ちなみに店員さんは、気づかぬふりを決め込んでいるようでした)

 

注意のしかたは、本当に難しいですし、こちらが絶対に正しいということは、ありえない、そう気づかされた出来事でした。

昔は近所にもっと生き物などがいて、触れ合う機会も多かったのに、今では自然も失われ、そういったことも少なくなったように思います。(山口はまだ残っている方ですが)ペット禁止のマンションや集合住宅なども増え、ペットショップや動物園くらいでしか生き物と触れ合えない環境では、子ども達も動物を可愛がるとか、命を大事にするとかという思いを持つことが難しくなったのかな、などと考えてしまいました。

岸 健一

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次