「地球が太陽の周りを動いている」「地球の周りを宇宙が動いている」どちらが本当か、現在ならおそらく小学生でもみんな知っているでしょう。地動説と天動説と呼ばれるこれらの学説は、現在ではさらに観測技術の向上などにより、宇宙の起源や拡がりにまで発展しています。地球はもちろん、太陽でさえ宇宙から見ればちっぽけな存在です。ところが、「地球が宇宙の中心である」という考えが正しいとされていた時代があり、地動説が正しいと唱えると「異端」とされていました。有名なガリレオ裁判では、裁判で異端とされたガリレオがその後死ぬまで8年間、自宅軟禁されました。
なぜそのようになったのでしょうか?実は、地球が太陽の周りを動いている証拠は、ガリレオ以前にも多くあり、科学的には証拠もありました。一方で、天動説の根拠は、「神が宇宙を作った」ということのみでした。今考えたらばからしいと感じられるでしょうが、400年ほど前には真剣にそのように考えられていたのです。
現代はどうでしょう?大人の言うこと、えらい政治家の言うこと、先生が言うことが必ずしも正しいわけではない、ということは、大人の責任として子ども達に伝えていかなければと常々思っています。特に、日本人は大人の言うことを鵜呑みにする傾向が強いと言われています。海外では、子ども達が自由闊達に議論をしあう授業スタイルが主流で、例えばドイツなどではメディアリテラシーの教育や、中学生以降ではディベート(討論)も行われています。空気・水・食べ物・住む場所などなど、そういったものの安全性が子ども達が成長した時に、脅かされている可能性がいくつか指摘されています。そんな時に「なにかがおかしい」と気づき行動するか、それともただ従うか、できれば子ども達には前者であってほしいものです。
でも、そんな人に育つように子ども達にどう接するか、これまでのやり方に甘んじていては足りないかもしれません。一つのヒントとなるかと、「嫌われる勇気」(岸見一郎・古賀史健共著)というアルフレッド・アドラー心理学の本を読みました。アドラー心理学は自分には難しく、これまで敬遠していたのですが、この本は対話形式で徐々に読者を納得させる工夫があり、読みやすかったです。読んでいるうちに、腑に落ちる教えが多々ありました。
一番衝撃的だったのは「ほめてはいけない(叱ってもいけない)」という教えです。以前は、この考えが受け入れられず、敬遠してきたのかもしれません。なぜほめてはいけないのか、その根拠は、大人と子どもとの関係を含め人と人には上下関係がない方が望ましいから、というものです。ほめるという行為は、立場が上の者から下の者に対して行います。つまり、ほめることは大人の要求をこなしたことを評価したにすぎず、結果的に子どもの成長を阻害するというものでした。そうではなく、要求したことができたら「ありがとう」と伝えるのみでよいそうです。
とはいえ、すぐには自分もこの教えを受け入れられませんし、ましてや実践できるかと言えば難しいでしょう。しかしながら、このような接し方ができれば、子ども達が自分の頭で考え、例え大人が言うことが間違っていても鵜呑みにせず、自分の意思で考え行動できるように成長するのでは?などと思いました。まずは、「大人だから上、子どもだから下」という発想から、少しでも抜けだせるように努力してみようかなと考えています。
元気ッズ・ジュニア学童担当 岸 健一
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