前回ご紹介した、※樋口先生の現場点検の講評を基に、月に一度、学童クラスを担当しているコーチが集まって、どのような練習を組み立てたら子ども達の泳力アップや心の成長のお役にたてるか、知恵を絞って話し合っています。
今回はその会議で話したことをヒントに考えた方法で、嫌いなキック練習を小学校の低学年の子ども達が楽しく頑張れたと言うお話です。
※樋口邦彦 先生
『やさしいお母さんに慣れるヒント』著者である樋口先生に『子育てヒントの会』講師と全スタッフの研修をお願いしています。
基本はキック
NAPでは、初級(12級~8級)中級(7級~3級)上級(2級~)と泳力でクラス分けをしているのですが、問題のキック練習は基本中の基本!しっかり蹴れないと、どの級でも姿勢が保てずきれいに泳げません。
初級(8級)は息つぎクロールで15メートル。中級は4泳法で25m、2級で100m個人メドレー。その距離を蹴り続ける体力と気力が必要で、それを養う練習はとにかくキック練習を繰り返すしかありません。
いつもの練習風景
『25mのバタ足8回!』と言うと、A君は嫌な顔をしながらもバタ足練習を始めます。最初のうちはがんばれるのですが、4、5回すると途中で泳ぐのをやめてしまいます。『頑張ろう。』と声をかけるとまた蹴り始めますが、すぐに立ってしまいます。
進級バッチ獲得まであと少しのB君は、『合格』という目標があるのではりきって頑張りますが、半分の回数までくるとやはり飽きて来て、コースロープを持って進み始めてしまいます。
最初からしたくないモード全開のC子ちゃんは後ろの方へと逃げていってしまいます。声をかけて何とかやり始めてもすぐに何か理由を付けて続けようとしません。
他の子ども達も同じように渋々やっているだけ。とにかくバタ足練習をさせようとするコーチの気持ち等子ども達にわかるはずもなく、どう見ても自分から進んで・・・という様子は見られません。
子ども達の感情を刺激する
前述の学童会議で樋口先生からアドバイスをいただきました。
『やりたくない練習を子ども達が楽しく続けるにはどうしたらよいか。例えば、ジャンケン。勝てばプラスの感情を得られるし、負ければマイナスの感情が生まれる。そうした感情で子ども達を刺激してみることがヒントにならないか。』
つまり、『単調な練習に勝ち負けの感情が生まれるようなゲーム性を持たせたら?』というアドバイスです。
ジャンケンを使って
土曜日の中級のクラスで樋口先生のアドバイスを実践してみました。
きついけど必要な長~いキック練習にジャンケンの要素を入れてみたのです。どのような練習かというと
プール中央にある浮島に向かってバタ足で泳いで行き、着いたらジャンケン。勝ったら浮島に置いてある腰ヘルパーをゲット。負けたら無し。置いてあるヘルパーが無くなったらその時点でキック練習は終了!
このようなルールを決めて個人戦でやってみました。「勝った、負けた」に子ども達は思った以上に盛り上がり、いつもなら一度でうんざりするキック練習に何度も挑んでいました。
日曜日の中級クラス。男子、女子6人ずつなので男女のチーム戦にしてみました。普段は渋い顔の子ども達。特に賞品があるわけでもないのに、ジャンケンにもキック練習にも真剣に取り組み、自分だけでなくチームの勝ち負けに一喜一憂。
個人でもチームでも同じように辛かったはずのキック練習を楽しんでいました。
きつい練習も楽しくなる?
子ども達のこの変化も樋口先生の
『チーム要素・対決要素を入れることできつくても練習という意識が薄れて率先してできるようになる。』
というアドバイスを試してみた結果です。
試行錯誤しながらの1ヶ月。今まで同様の練習での成果とどれだけ違うかわかりませんが、何度も繰り返す子ども達の頑張りのおかげでビート板を持ってのバタ足もきれいに蹴れるようになってきました。
研修での樋口先生のアドバイスにより練習に対する新しい考え方を得ることができ、ゲーム性を持たせたら辛いだけだったキック練習でも子ども達は自然に協力し合い、また競い合うことでお互いに成長し合い、頑張る心が育まれるような気がします。
ただ、小さい頃から競泳の世界に身を置いてきた私としては、怒られながら厳しい練習を続ける中で自分の成長や成果を感じてきましたので学童クラスとはいえ辛い練習も、乗り越えて欲しい気持ちもあります。
でも繰り返しばかりの練習は楽しいものではありませんし、私自信もイヤイヤ仕方なくやっていました。
だったら楽しい方が練習の回数は増え、早く上手に泳げるようになりますよね。どちらが効果的か。悩ましい限りの今日この頃なのです
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