中村社長のコラム 「保護者」から「親」へ … 子育ての評価とは?  PART11~「意志」の獲得は外社会で戦う心のエネルギー 

40歳以上のひきこもりが・・・

61.3万人と内閣府が発表したのが今年3月。その約半数が社会に出る段階での躓きが要因とのことです。しかも76%が男性。引きこもり(不登校)経験のある息子が二人もいる私としては他人ごとではありません。今回は我家の不登校第一号である次男の就職活動(以下就活)から社会に出る過程を振り返り、考えてみたいと思います。

 

目次

我家の社会人第一号は次男!?

我子の就職を振り返ると、音楽大学に進んだ長男は、卒業はしたものの専門課程の受講生として大学に残ったため、次男が社会人でも我家の第一号。やはり、親としては我子の初めての就活は気になるものです。どうするのか…と口を出したくなる気持ちを何度も飲み込みながら、妻を経由して就活の状況を窺っていました。

次男は経済学部に進んだこともあり、営業系での就職を希望していたようで、どれくらいの会社にエントリーしたかは知りませんが、5・6社程度入社試験を受けたようです。結果は1社を除いてすべて内定をもらっていました。その内定がもらえなかった1社についての次男の一連のエピソードをお伝えします。

 

唯一内定をもらえなかったT社

その会社は、山口市内に本社を置く「T社」。実はこのT社は、私の父親の代からの親しい関係で、経営方針も顧客志向の大変魅力的な会社です。社長とも先輩・後輩の仲で、経営者としてだけでなく人としても心から尊敬し、目標としている方です。そのT社にエントリーしたと聞いた時は大変嬉しく、親としては何としてもT社に就職して欲しいという想いでした。

 

不採用通知を送らない「入社試験」

そのT社は、大変ユニークな入社試験システムで、エントリーから約5ヵ月かけて実施され、最後までチャレンジを続けた人材はすべて採用するという「不採用通知を送らない」システムでした。試験というより研修会のスタイルで、半月~1ヵ月くらいの間隔で希望者を召集、合宿形式で行われることもありました。毎回終了後に課題が出され、それを持って次回の試験(研修)に参加するという形式でした。

その課題も回を重ねることに難題となり、2ヵ月目だったでしょうか「100名以上の人に、T社に入社することを話し、応援メッセージをもらってくる」という課題でした。

次男もその課題には面食らったようで「100人も無理!」と言って、大学に戻って行きました。次男の性格や今までの経緯を考えると、ちょっと荷が重くここで断るだろう…と思っていましたが、1ヵ月後100枚超のメッセージを持って帰って来ました。本人曰く、「途中から面白くなった!」と友達関係だけでなく見知らぬ人にも声をかける等、積極的に活動したようです。不登校をしていた時の次男からは想像できない行動でした。

 

厳しい戦いにチャレンジし続ける!

しかし、次男としてはT社に対して魅力は感じているものの、元々希望していた職種があったため迷っていたらしく、4ヶ月目の個人面接の2日前、他の就活等で課題が進まずT社を断るとTELをかけてきました。これには私も「T社に来るな!と言われるまでは行くべき。課題も提出まで24時間以上ある!」とついに口をはさんでしまいました。少々パワハラ的ではありましたが(笑)、必要とされる人材に成長して欲しいという想いからでした。

 

その時次男からは明確な返答はありませんでしたが、個人面接の当日、朝一番の新幹線で帰ってきました。そして、面接では、課題は提出したものの他社と迷っている自分の今の気持ちをストレートに伝えたようで、T社

の方もそんな次男に対して真摯に対応くださり、次男のこれからについて色々とアドバイスを頂いたようです。そして、「しっかり腹を固めてから来なさい。それが半年後、数年後でもいいから」と言って下さったとのことでした。最終的には「来るな!」と言われた訳で(笑)、最後まで挑戦し続けたことは間違いありあません。

 

結果的には当初から希望していた、某大手系ハウスメーカーに就職。いきなり鹿児島県勤務となったのですが、大学進学の時と違い引っ越しや入社の手続きも全く親を必要とせず、現在は住宅の営業マンとして勤務しています。大手系なので徹底した労務管理の中での職務は大変厳しいようで、入社3ヵ月ですでに鬱病を発症し休職。その後配置転換となった同僚もいるとのことでした。そんな環境の中、まずまずの営業成績は確保しているようです。

 

外社会での戦いに負けない心が重要

冒頭でも述べた通り、引きこもりのきっかけとして「就職が上手く行かなかった」「職場に馴染めなかった」という理由が全体の44%(平成22年の統計)を占めている通り、社会に出る段階での何らかの問題が深刻な引きこもりに繋がっているようです。別な角度で考えると「外社会での評価に対応できない」のではないかと思います。

しかし、就活は長い人生から見るとほんのひと時であり、楽をしようと思えばできるものです。特に労働人口の減少が長期的な現象となっている現代では、ある意味苦労しなくとも就職できるのです。(選ばなければ…)
その点から、次男の就活・就職にかけての一連の行動を考えてみると、すでに就職率が良くなった時代とは言え大変厳しいものでした。T社以外も個人面接、集団面接は当たり前で、その場で明確に自分を表現できなければ評価されません。

ですが、就職=外社会に出ることは学校の何倍もの期間であり、現代の子ども達の将来を考えると、定年と呼ばれる年齢を過ぎても20年以上働かなければならない時代となるのです。それだけ長い期間、仕事という「外社会での評価と戦い続けなければならない」のです。ですから、重要なことはこの評価という戦いに負けない心を培っていることではないかと私は考えています。

 

引きこもりは人生にとって必要?

その意味で、学童期に引きこもり(不登校)を経験した次男ではありますが、それにより自分の「意思」をもって行動する心を掴み、その後友達との関係の中でお互い主導的に行動することで人間関係を感覚的に学んでいきました。そしてその関係性を基盤に外社会を意識することで社会的評価を理解し、自分の目指すものを自分で決め、そして部活そして高校・大学進学において自分の主体性を見出すことにより、その厳しさに負けない心を培ってきたと考えられます。そして何より、それら最終的にはすべて次男自身の「意志」による行動、言い換えるなら次男自身が望んで行った行動であることから、どんなに厳しくともその戦いにチャレンジできるのではないでしょうか?

そのように考えると、次男の引きこもり(不登校)は次男の将来にとって必要な行動だったのかも知れません。

最終的に厳しい外社会での評価と戦うには「意志」の獲得を中心とした心の成長が必要であると切に感じています。そのため、NAPでは子どもプログラムにおいて、心理的発達段階の理論をベースとしています。

しかし!親の願望を言うなら、今回のT社への就職も含め、全く思い通りにならない!(怒)しかも、今となっては家にも帰って来ない!(涙)

でも、次男の人生を考えれば良しとしなければならないでしょうね。

 

 

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