「ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく」ダイヤモンド社 堀江貴文著
堀江貴文ことホリエモンといえば、2000年代前半、メディアに登場した頃から時代を席巻する行動や歯に衣着せない発言で、世間の評価は真っ二つ。2006年にライブドアグループの証券取引法違反で東京地検特捜部に逮捕され2013年に出所したが、最近も世間を敵に回すようなトラブルがあり、良くないイメージを持っている人は少なくないであろう。
この本は2013年10月に出版された。自分は案外努力家で、恵まれた環境と才能で難なく事業に成功したわけ
ではないこと、独房生活の地獄のような日々で若い刑務官のやさしい一言に救われ夜通し嗚咽して泣き、今でも感謝していることなど、それまで明かしてこなかった幼少期や過去の気持ちも触れていて好感が持てた。
本書は「ゼロ」というタイトルだけあって0章から始まる。40代になって社会に戻る際の「会社を失い、大切な人を失い、社会的信用を失い、お金を失い、ついでにぜい肉まで失った」のくだりはちょっと笑ったが、心身ともに真っさらな久々に経験する「ゼロ」の状態は意外なほどにすがすがしかったらしい。
この本で一番印象に残ったのは、「はじめの一歩はすべて地道な足し算から」ということ。成功者だった著者は、どうやったら堀江さんのようになれるかと聞かれる度に、多くの人は掛け算を求めていると思ったそうだ。ゼロに何を掛けてもゼロなのだ。まずは「小さなイチ」を足すことが大事で、著者も掛け算になったのはかなり後のことだったらしい。
また、NAPでは「お金は役立ちの物差し」と研修を受けるが、この本では「お金は信用である」とあり、信用がお金になることは大いに理解できるし、信用はお金では買えないというのもすごく納得。
そして、「自信」とは自分の力を信じることだ、というのも良かった。他人から自分はどう見えるかは関係ないという考え方は好きだ。
中村社長と樋口コンサルは、以前口癖のように言っていた。「ホリエモンのように仕事も遊びの一環になれば、楽しいから寝る間も惜しんで働ける」と。著者が時代の寵児ともてはやされた20代の後半、若者からは比較的人気があったと思うが、生意気だとか強欲だからと彼を毛嫌いしていた中高年層は多かった。そんな中、社長とコンサルは彼を高く評価しており、メディアで執拗に叩かれる様子を懸念する2人の雑談を小耳にはさんだことを思い出す。
今後の人生、焦らず騒がず地道に「小さなイチ」を足し続けていこう。
「老後の資金がありません」中公文庫 垣谷美雨著
NAP通信が発行される頃にはもう映画の公開が終わっているかもしれないが、随分前に旦那が買っていたこの本があったので読んでみた。
老後の資金は我が家も寒々なので気にはなっているが現実逃避・・・。そんな気持ちに追い打ちをかけるように、前半は読めば読むほど落ち込んだ。しかし、豪華すぎる施設で暮らす主人公篤子の舅が仏様になり、夫婦でリストラされた篤子夫妻が姑を施設から出し同居することになった辺りから、痛快な展開でとても面白く読み進め、最後には楽しい気持ちになれた。映画館で予告を見た時は劇場で見るほどではないと思ったが、読んでみると映画でどのように味付けされるのか観たくなってきた。
二つの本で感じたこと
ホリエモンは、父母のいない風景をずっと感じていたようだ。愛されてなかったわけでもないと思うしネグレクトだったわけもないらしいが、授業参観に来てもらったことがないそうだ。老後・・に出てくる主人公の義理の妹もまた、親の愛情が自分の兄にばかりあったと50歳過ぎてもなお恨みを募らせていた。
NAPで基本にしているエリクソンの発達段階は重要だなと思った次第だ。
成人スタッフ 松本 真佐美
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