しなやかな心の強さを ジュニア学童担当 松本真佐美

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コーチが学び、感動した話

学童教室では、60分という時間の中で様々なドラマがあります。その時に起きること自体に感銘を受けることもあれば、背景を想像して感慨深く思うこともあります。

今回は、Kくんとのかかわりにおいて私が学んだ事の紹介です。

 

行動はマイペースだけど豊富な知識を持つKくん

小学1年から通ってきてくれている、現在6年生のKくん(白石小)は5年生の時に背泳ぎを合格し、私のクラス(5級:平泳ぎキック・4級:平泳ぎ・3級バタフライ)に進級してきました。

5級であれば、クロールと背泳ぎの25mは上手に泳げるはずなので、復習も兼ねてどんどん泳いでもらいます。しかし、Kくんは泳ぐスピードがとてもゆっくりなので、時には周回遅れになることも。

そんなKくんに同じクラスで速く泳げる男子が「オレ、この人の後ろでスタートしたい」とか、その他にも大人の目から見れば、これってイジメ?とも解釈できそうな言葉や態度をとることが度々ありました。

でも、Kくんはそんな時であっても常にハッピーな雰囲気を醸し出しているのです。お友達のちょっかいを全く気にすることなく、自分のことに集中し、わからないことがあると、他の子にアドバイスしている最中でも、どんどん聞いてくるので「待ってね、今、○○ちゃんに話をしているから」「ごめんごめん」という会話も少なくありませんでした。

身のこなしがちょっと不器用で、多分スポーツ全般が苦手なのかなと思えるKくんですが、少し話すだけで幅広い知識を身につけていることがわかります。きっと本を読むのが好きで、たくさん読んでいるのだと思います。

 

Kくんのクイズが友達を巻き込んだ

教室での様子はというと、男の子同士、子ども同士で盛り上がるというよりも、私と1対1のコミュニケーションを楽しんでいることがほとんどでした。ある日、マニアックな問題を考えて来てくれ、それ以来、Kくんが出題し私が答える(答えられない)というのが日常になり、最初は無関心だった他の子ども達も、ある時を境に男子も女子もその問題に答えていくようになりました。

結構専門的な問題なので、なかなか正解が出ないのですが、Kくんが良いヒントをくれるので、誰かが答えると、負けまいと他の子も考えて答えるようになり、10人前後の子ども達が一体になって楽しむようになってきました。

誰にも流されない素直でまっすぐな意思は、人の心を動かすのかもしれないなあと思い、それこそが『しなやかなの心の強さ』ということなのだろうと私の中で解釈していました。

 

ご家庭への電話連絡で感じた「なるほど!」

そしてある日、「そうか!きっとこういうことなんだ!」と感じた出来事がありました。

8週単位で練習カリキュラムを作成し、7週目にバッチテストをするので、2ヶ月ごとに進級テストがあるというわけですが、そもそも平泳ぎの4級・5級は、全般的に長く留まりがちな子が多く、教えるコーチ側としても難しい級です。

Kくんは5級の平泳ぎキックの習得に少し時間がかかりましたが、3回目(6ヶ月目)のバッチテストで見事合格を果たしました。

NAPでは、バッチテストが終わったら、担当しているお子様のご家庭に普段の様子などのお知らせも兼ねてお電話しています。Kくんのお家にも2ヶ月毎に一回、2度お電話をさせていただいていました。

3度目の電話は、嬉しい合格のお知らせです。既にKくんから報告があった様で、お母様が

「聞きました!お姉ちゃんも信じられない、凄く嬉しい!と言っています。みんなで一緒にとても喜んでいます!」と、受話器の向こうでご家族皆様が大変喜んでおられる様子にこちらの方がとても幸せな気持ちになりました。

その時「そういうことか!なるほど!」と、サーっと気持ちよく視界が開けた様な清々しさを感じたのです。

 

何物にも流されない『しなやかな心の強さ』

つまり、Kくんはとても分かりやすい形でご家族からのゆるぎない愛情を一身に受け、本人もそれを自覚しているのではないでしょうか。だからこそ、自分に自信を持ち、例え否定されるようなことをお友達に言われたとしても、全く意に介さない強くてしなやかな心を身に付けて育っているのではないかと思うのです。

まるで、強い風にあおられても、しっかりと根を張り、倒れることのないしなやかな柳の木のように。

私の子ども達はもう成人してずいぶん経ちますが、果たして私は子どもの発達段階に添ったゆるぎない愛情を注いでいただろうか?心の強い人間に育てることができただろうか?と反省してしまいます。

『自分は家族から大切にされている』と実感できることは、自分の存在を積極的に肯定できること(自己肯定感)に繋がっていくとNAPでは考えており、子ども達自身が自己肯定感を感じられるようにと、普段から子ども達をしっかりと見守り、「できたこと」をその瞬間に褒めるように心がけています。

なぜなら、ご家族から大切にされるのと同様にたった一人でも他の人からも大切に思われていると感じられることは、その子にとってこれからの『生きていく力』になると思うからです。自分を肯定する気持ちが否定する気持ちを上回れば、世の中は捨てたものではないと前向きに歩んでいけるはずです。

これからの時代を乗り越えていかなければならない子ども達が『しなやかな心の強さ』を持ち、『生きていく力』を獲得するお手伝いができるように、スタッフ一同努力していきたいと思います。

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