手 綱 を 締 め る

乗馬をする際、人と馬は手綱などを使って様々なコミュニケーションを行ないます。特に手綱は馬の口につながっているので、細かい指示を伝えるために有効です。

 

しかし、手綱は、力任せに引っ張ればよい、というものでは決してありません。例えば馬を止まらせたいときに全力で手綱を引くと、馬は抵抗して暴れたり、あらぬ方向に行ったりすることがあります。

乗馬に慣れてくると、こぶし一つ分引いたり、指に軽く力を込める程度で馬を止めたり左右に方向転換させたりするようになってきます。初心者との違いはなんでしょう?

答えは、『手綱を締めているか否か』です。

 

人間関係にも、似たようなことが言えるのかもしれません。人間同志においては、物理的な手綱は存在しない代わりに、言葉やジェスチャーによるコミュニケーションなどによって、相手と適度な緊張感を保ちつつ、行動を促すことができます。

 

人間関係においても手綱を締める、緩めるの繰り返しがスムーズに行くと、コミュニケーションが円滑に進みます。相手を強制的に従わせようとしてもうまくいかないのは、手綱を力任せに引っ張っているのと同じ状況かも知れません。逆に緩めっぱなしだと、相手に響かなくて、何を言っても聞いてもらえなくなってしまいます。

 

『個性を尊重する』ということを、『何でも子どもの言うとおりにする』と混同してしまうと、うまくいきません。これは手綱を緩めっぱなしにしている例でしょう。

 

乗馬において本当に理想的なのは『人馬一体』と呼ばれる境地です。これは、お互いの気持ちがつながり進みたい方向に馬が進んでくれる状況です。手綱がなくても、馬が意のままに動くのは、馬と人間の間に信頼関係が築けていることを意味します。

 

人間関係で言い換えると『以心伝心』でしょうか。目配せやちょっとした所作で相手が動いてくれたり、逆に自分が相手の望むように動いたりするような信頼関係ができると、お互いにストレスなく過ごすことができるのでしょう。

 

教室の指導においても、なるべくその境地に近づくように、事前の予告やカリキュラムの提示、中長期的な目標作りなどを工夫しています。こちらの願いと子どもの思いとが重なる瞬間は短いのが実際のところですね。だからこそ、その以心伝心の一瞬を大事にしていきたいですね。

ジュニア学童教室担当 岸 健一

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