「エレファント・シンドローム」をご存知でしょうか。
それは、心の中に無意識にできてしまう障壁のことです。
サーカスなどにいるゾウは子どもの頃、調教のために足に頑丈な鎖をつけ、杭などに固定されます。ゾウは自由になろうと動き回りますが、どんなに動いても鎖は外れません。こうして、成長して大きくなっても、「足に鎖があるから逃げられない」と学習するのです。結果として、鎖など簡単に外せるように大きく成長しても決して逃げ出すことはないのです。
この現象をエレファントシンドロームというのですが、同じような心の障壁は、実は人間にもあります。
「無理」「ダメ」で育ってしまうと・・・
今の若者は「さとり世代」とも呼ばれる欲望の少ない世代で、一層その傾向が強いです。子どもの頃から「無理」「だめ」と言われたことで、「ああ、無理なんだ」と容易に悟ってしまい、それ以上のことをしなくなるのです。
生まれた時からインターネットの中で育っている今の子どもたち。検索すればたいていのことが瞬時にわかります。「知識欲」は育ちにくい時代と言えます。外に出なくて済むのですから、「探究心」も育ちません。運動しなくてもサプリメントなどで健康も維持できます。なにより、他人と接することでしか育まれない
「優しさ」や「相手を気遣う心」などが育まれにくいのは、人間の成長にとって致命的かもしれません。
このままでは、お隣の国でミサイルを発射しても、友好国である大国が日本に対して不利益なことを決定しても、少子高齢化による矛盾がどんどん目に見えてくるようになっても、それらの問題を何とかしようという意欲は弱く、運命だと諦めてしまう若者で溢れてしまうかもしれません。
ハードルを乗り越えて欲しい
欲望は強すぎてもだめですが、弱すぎてもいけません。ちょっとしたことで簡単にくじけたり、希望を失わないように、うまくコントロールす
ることが大事です。そのためにNAPは考えています。
ハードルがあっても、それを頑張って乗り越えることで培われる心。そんな心をプール活動の中で育みたい。
NAPのメニューの不便で不自由な経験は、能力の限界を超える心への挑戦
例えば、「水中伝言ゲーム」という活動があります。これは、水中で単語をリレー形式で伝えるのですが、水中では声が伝わりにくく、子ども達は苦労します。そこで「どうせ無理」とあきらめずに、ありとあらゆる手段を試します。より大きくゆっくり声をだしたり、口を大げさに大きく開けたり、ジェスチャーを交えたり、チームの他のメンバーが協力して同じ言葉を言ったり(ルール違反なのですが…)。
今はメールやLINE等でいつでもどこでも簡単に意思疎通ができる便利な時代です。だからこそ、不便で不自由な経験を意識的に組み込み、乗り越えようとする経験をたくさん積み重ねる。そうすれば、将来きっと役立つのではと思うのです。意外な場面でも。
自分の能力の限界を簡単に決めて欲しくはないのです。
ジュニア学童教室担当 岸 健一
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