学生の頃、子ども達を引率するイベントに参加した時のことです。その日、K君とM君という男の子が参加していました。K君はやんちゃなタイプ、M君は発達障害があり、二人は特に仲良しというわけではありませんでした
M君は特定の行動を繰り返す傾向があり、その一つが食器洗いでした。昼食後、いつものようにM君は食器を率先して洗っていましたが、洗うものがなくなったので、K君の水筒を洗いました。ところが、その水筒にはまだたっぷりのジュースが残っていました。当然M君に悪気は全くないのですが、それを知ったK君は烈火のごとく怒り、体育館にいたM君につかみかかりました。
K君はM君を床に押し倒して殴りかかろうとしていたので、自分が止
めに入りました。K君をなだめ、なんとかK君も矛をおさめてくれました。そしてM君の方を見ると、なんと意外なことにM君はケラケラと笑い声をたてて笑っていました。M君の性格からして、突然怒られて「泣き叫ぶだろうな」と思っていたので、なぜだろう?と思いました。
おそらくですが、M君は、普段は接触のないK君に遊んでもらえたと思って、喜んでいたのではないか、と思います。このことから、ある出来事に対して人の感じ方は様々であること、子どもを指導する立場として、自分の価値観のみを押しつけてはいけないのだということを学びました。
NAPの指導を始めてからも、子ども同士のトラブルは数多くあります。そして、トラブルのパターンやその感じ方は、実に様々です。1対1のけんかが10件あったとして、その解決法は10通りではありません。それぞれの性格や主張を考えると、少なくとも10×2=20通り以上あります。それがさらに2対2や、3対1などとなると、ますます複雑になります。
結局は、けんかするそれぞれの立場を尊重しながら、一方的に解決するのではなく、全員が納得できるような解決策を探るしかないのかな、と思います。なるべく公平に解決するためには、普段から子ども達の様子をよく観察することはもちろんのこと、それぞれの言い分を聞くことは、欠かせないと思います。その時に、素直に子どもの言葉に耳を傾けられれば良いのですが、つい先入観で裁いてしまい、反省もよくします。そんな時は、冒頭の学生の頃の経験などを思い出し、一方的な価値観のみでは判断できないこともあるのだと自分に言い聞かせています。
岸 健一
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