まず、今回は大人の方々にとって、少し耳の痛いお話になるかもしれないことをご了承ください。
100%の力を出し切る、これは自分たち大人にとってとても難しいことです。なぜなら、大人になればなるほど、「これは難しいな」「これは前やってできなかった」という経験則などから、自動的にブレーキをかけてしまうからです。付け加えて、「こんなこと人前でやったら恥ずかしい」「全力になるほどのことではない」という心理的なブレーキも働きます。そのため、「よし、やろう!」と思って全力を出そうとしても、上記のようなブレーキもかけてしまうため、アクセルを踏みながらブレーキをかける状態になってしまいます。
その点、子ども達の行動を見ると、特に小さければ小さいほど当てはまると思うのですが、本当に全力で楽しんでいるな、と思う場面がよく見受けられます。特によく見られるものとして、「少々きつめの練習をした後のゲームの時間」があげられます。ぜぇぜぇ息を切らしながら、顔が真っ赤になっている子もいて、最後のゲームはまた今度にした方がいいかな?と思っていたら、「ねぇ、さっき言っていたゲーム、早くやろうよ!!」とのコールがかかります。おいおい、さっきまでふらふらだったよね?と言いたくなりますが、でも、このやる気が大事なのです。
なお、そのゲームが、それまでの泳ぎの練習との関連性があるものだとなおやる気がわいてきます。そして、ゲームを全力で楽しんだ後の子ども達の足取りは軽く、表情も疲れが吹き飛んで晴れ晴れとしているのです。そう、本当に100%全力を出した後は、気分もさわやかに、体もさっぱりしているのではないでしょうか?
大人になると、「次の仕事があるから・・・」とか「明日起きるのがきつくなるから」とか「全力だしてもたいして結果が変わらないでしょう?」などなど、なにかしら100%を出さない言い訳をしながら生きているのではないでしょうか?子ども達にこの点は見習わなければと思います。
もう一つ、子ども達の全力が出ているときの条件として、他の友達(やコーチ)が一緒に頑張っていたり、応援し合っていたりすることがあげられます。一人の力だけでは無理なのです。たとえ、それが水泳のような個人スポーツであっても。仮に子ども達が対戦式のゲームをしていて、「もっとしっかりやれよ」とか「あいつのせいで」「あいつがいなければ勝ってたのに」といった言葉が出ているような時は、決して良いパフォーマンスが生まれません。また、真剣にやる場面で数人がダラダラとやっていると、次第にパフォーマンスが落ちてきます。大人になっても、同じですよね。
本当に、子ども達というのは、大人にとっての最高の教師だと感じます。
岸 健一