甘え」をどのように受け入れるか~かわむらコーチだより~

 競泳など競技スポーツは「甘えは禁物」だと思われている方も多くいると思います。人間は自分には一番甘いものです。しかし、それは競技者としての成長を妨げる要因になりかねません。そこで競泳を例に、甘えについて書いてみたいと思います。

 競泳の練習は、呼吸も限られ、とてもハードです。特に、育成以上のクラスは大会・タイムを目標にしているため、毎日、1時間半で3千~5千m泳ぐ練習は辛いものです。ですから、私自身もそうでしたが「練習を休みたい」「楽な練習がいい」という気持ちが必ずもたげてきます。しかし、大会でベストタイムを出したいと思えば、甘えの気持ちが強ければ、当然、結果を出すことはできません。

 年齢や泳力が低い子ほど泳ぐ距離に比例してタイムが伸びていくものですが、高学年以降ではそうはいかなくなります。だからと言ってハードな練習を課せばよいというものでもありません。疲れもたまってきますし、結果を出せない期間が長くなると何より気持ちがついていかなくなっていきます。

 練習の前には、毎回練習メニューを提示して、それぞれのメニューの目的や注意事項、具体的な目標タイムを説明します。そして、一人ひとりの泳ぎや表情から、その日の状態を読み取ります。

 気になることがあれば、「今日は調子が悪いん?」「痛いところがあるの?」
と声をかけるようにしています。ただ気分がのっていないこともよくあるのですが、そんな練習は成果につながりません。

 そこで、「タイムはこのぐらいでいいから、ここに気を付けて」など、目標に向けてのペースはゆっくりになっても、歩みを止めることなく、進めます。だからと言ってこれで安心はできません。

 何より重要なのは、自分の目標の明確化です。育成クラス以上は、シーズン終了時に個別に三者面談を実施し、来シーズンの目標を決める場をもちます。目標は押しつけることはせず、本人が納得するまで、話し合います。実際には、目標を立てていても、時間の経過とともに目標をキープする意識は薄れがちです。

 加えて、泳力レベルが高くなれば目標までの期間が長くなりますから、目標の再確認が必要となります。

 再確認できる一番の機会が大会です。レースはもちろんですが、個別目標に対する現状や今後身につけなければならないこと、練習で頑張ったことを一対一で話し、本人の思いも聴き取ることができます。

 甘えを意識しながら、それを超えようと努力していても、甘えは出てきます。そういう時は、一方的に「ダメ」ではなく「(今のままで)目標は達成できそう?」と、問いかけます。「もっと頑張らないと目標が達成できない」と選手自身に気づいてもらいたい。それまで、指導者も妥協することなく、根気強く、繰り返し働きかけていきます。

 ここでは競泳をあげていますが、他のスポーツ・勉強などでも言えることではないでしょうか。人間は、子どもから大人までみんな甘えを持っています。そのことを充分に理解し、接していくことが必要ではないでしょうか。

競泳・泳法主任  河村 浩道

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