2016年6月に開催されたスポーツハッカソン。
6月はテクノロジー機器と運動会で行われる種目を組み合わせて新しいスポーツを作り出しました。スポーツの観戦や、プレイして楽しむ人がいる一方で、その楽しんでいるスポーツは昔誰かが作ったものです。
過去には、その時代の最新テクノロジーを使って新しいスポーツが生まれてきました。(例えば、豚の睾丸を縫う技術が多数の球技を生み出しました。)昔はなかった現代のテクノロジーを使うことで、過去には生まれなかった新しいスポーツは生まれるかもしれない。
そのスポーツ開発に子どもたちに挑んでもらおうという取り組みです。
①山口発信
数年前、報道番組をぼんやり見ていたら動物のシルエットと子どもがかけっこを出来るアトラクションが都心にあると伝えていました。動物の出すスピードと競争できるなんて都心は面白いなと思っていたら『山口で開発されたこの作品は…。』と聞き、衝撃を受けたのを覚えています。山口に高い技術力と発想を持った人達がいる!機械は得意ではないし、理数系でもない私が『いつか、一緒に仕事が出来たら。』と漠然と頭にありました。
②それがスポーツハッカソンのチームだった
元気ッズは、小学生の『あれもこれもしたい』好奇心旺盛な時期に、専門的な技術や知識に触れてもらおうと考えています。
更に、子ども達がルールを決め遊ぶ『群れ遊び』を重要視しています。『群れ遊び』によってルールの背景にある心を学び、ルールを運用できる能力を培って欲しいと願っています。
ファシリエータ―と呼ばれる中立な立場の存在を起用しているスポーツハッカソンでは、子ども達の考えたルールを形に組み上げ、新しいスポーツを作り出します。元気ッズの特徴とまさに一致しているのです。
③好奇心旺盛な時期に、専門的な技術や知識に触れてもらう
YCAMのプログラマーの皆様は知る人ぞ知る達人の方々です。チームに分かれ、お話をしっかり聞いて、新しいルールのスポーツを作り出します。
まずは、子ども想像力の可能性を引き出し、自分の考えを伝えていくことを目的とします。低学年は大丈夫かな?私はカメラを持ってうろうろ。心配ご無用。頭と体をフル活動するスポーツイベントを前に子ども達は嬉しそう。準備運動に綱引きと玉入れを同時に行うゲームをしました。紅白の玉は綱引きの中心にあり、連携して後ろへ回さなければ玉入れまで投げ入れる事が出来ません。わずかな差で赤の勝ち。黄色は悔しさをバネにハッカソンに取り組みます。
④子どもがルールを決めて遊ぶ
ハッカソンのアイテム
なかまんボール…開発者の名前から由来している。空気で膨らましたボールの中にiPodが入っている。動いたり、振ったりした回数をカウント出来る。 Yトリシャ…トリシャ・ブラウンという振り付け師の名前より由来。 彼女が新しい身体表現の模索のために棒の端同士をくっつけた状態で、棒をくぐったりまたいだりする実験を行った事から名前に至る。棒同士をくっつけると点灯し数もカウント出来る。 今回YCAMからお借りした道具類は、ただ楽しそうとか面白そうとかというものではなく、 新しい体の動きを生み出しそうな装置、利用者が自分の知覚とテクノロジーの関係性に対して認識を深められるような仕組み等心掛けて作られたそうです。
|
【赤チームのルール】なかまんボールでふりふりお邪魔ドッジ
小学生がボールを持つとテンションが上がるのは何故でしょう?
更にボールの中にはiPodが入っていて、ボールを振ると数をカウントしてくれます。
交代で振って喜ぶ子ども達、一体このボールから何を作り上げてくれるのだろう。赤チームは実践しては問題点を何度も話し合いました。
『これを使ってドッチがしたい!』という気持ちから、発言を繰り返します。『お邪魔する人が真ん中にいたら…』『すんなり相手コートにボールがいかなかったら』『外野はどうなる?』『ボ―ルを持ったら3秒振ろう』『カウント100になったらボールを持っている人をアウトにしよう』『鉢巻した人は2回まで当たってもいいね』
実戦していく内に次々と課題が出てきます。
思った通りにいかない事は、どうしようと立ち止まりまた考え直す。
実はこのチーム割とシャイな4年生を集めました。自分たちが動かなければチームは進めません。リーダー候補生頑張れ!!
結束力や役割分担を進んでこなした4年生。私の心配は無用とばかり。1年生もずっと耳を傾け、分からない所は質問します。中立の立場で見守っているファシリエータ―のお兄さんも頼りになります。見守りつつも、意見を促して下さいました。
【黄チームのルール】Yトリシャで障害物リレー
2本が1セットのYトリシャ。2本を結合するとライトが点灯します。
黄色チームはあえて、しっかり者チームにしました。初対面のお友だちといかにチームまとめてくれるか、完成度の高さを期待しました。期待通り高学年中心に進みます。寒いし、初対面やし…緊張していた初参加のゆいちゃん、ゆうとくんも最初こそ戸惑っていましたが、次第に表情は柔らかに。『トリシャを繋いだまま障害走』を軸に様々な意見がでます。
『繋いだまま出来る事』『短い時間で勝負がつく事』『協力が必要』等々、真剣な会議が繰り返されます。ファシリエータ―のお姉さんのヒントを得てルールを組み立てます。
『二人三脚を入れよう』『長縄で5回飛ぶことにしたい』『コーンで折り返そう』黄色チームのファシリエータ―のお姉さんは、じっくり皆の意見を聞き、引き出してくれました。
障害物を乗り越えつつ、ライト点灯の回数を競い、最後は引き算のペナルティーまで考案してくれました。さすがしっかり者チーム。勝負は最後までわからない構成力はお見事です。
このペナルティー引き算、最後に厄介な事になります。
⑤結果発表
各チームNEWスポーツのお披露目。普段シャイな子も『聞いて、聞いて』とばかり交代で発表します。
ボードにルールを書いて、皆の前での発表は緊張した事でしょう。でも、皆で考えたのだという自信が後押しとなり、マイクを握って分かりやすく説明できました。
先ずは赤チーム考案の『なかまんボールドッチ』から試合開始。2チームにわかれ、間にお邪魔さんが2人、ボールの行方を阻みます。鉄壁のガードに半袖で大活躍のお邪魔さん。夢中過ぎてラインをかなりオーバーしちゃう事件も発生。お構いなしでボールを追ってくれました。開発したチームが勝負は有利に運びましたが両チーム大健闘。
続いて黄チーム開発『トリシャ障害物走』2人一組という息が合わないと難しい競技となりました。二人三脚の後長縄5回飛びですからハードです。何度も練習を重ねただけあって黄色チームの動きはスムーズ。トラブルなく順調に終わります。赤チームは大苦戦。トリシャが長縄に引っかかり飛べない…。何度も挑戦が必要となりました。
最後に引き算タイム。スムーズに行き過ぎた黄色チームは点灯回数も少なかったので、まさかの赤チーム勝ち。試合に勝って勝負に負けたような…オチまでおまけでついてきました。
⑥今後の展開
スポーツハッカソンはきっかけの一つで、ここからお子さん達の心に響いた種が開発や発案の楽しみにつながる事を願います。
理想は定期的にテクノロジーに触れ、『自分で作りあげたい』心を養う事だと考えます。何事においてもスタートがあり、始めに触れた『快』を大切にしていきたい。それが『これがしたい』という信念に今後繋がるはずです。ゆくゆくは元気ッズ考案、NAPのプールでしか遊べないテクノロジー開発も視野に一歩ずつ進めたら嬉しいです。
元気ッズ 責任者 中村めぐみ